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03.11.21

«一つ一つの新しい作品ごとに、革への情熱が新しく生まれます » - メゾン・ジャンルソーのテクニカルディレクター、マイア・レノーの肖像

by Maïa Reynaud

優秀な皮革職人を輩出することで有名な名門校「エコール・ブダール」を卒業したマイア・レイノー氏は、高級皮革製品の資格をまだ取得していない時に、彼女の素晴らしい才能を買われてジャン・ルソー社に入社しました。現在、パリにあるブティックのテクニカルディレクターである彼女は、お客様一人一人のご要望に応じて、高品質のオーダーメイドの作品を提供することに日々情熱を注いでいます。

5歳の時に、乗馬を通して、騎手、ハーネス、手綱等の皮革製品と出会いました。幸運にも、所有していた馬のサドルや革紐を自分で修理する機会がありました。革を使って作業することは、なんて楽しいことなのでしょう。しなやかで耐久性に優れた天然素材の革を扱うことは、いつも私に自己表現の場を与えてくれます。

17歳の時に、私は革を扱う仕事に就きたいと考えていましたが、大学進学というごく一般的な道を勧められました。造形芸術と美術史の教師になることを目指していたある日、偶然にもフランシュ・コンテ地方に「高級馬具と上質な皮革製品」コースがあることを見つけ、
当時ブルターニュに住んでいた私は、応募する為にフランスを横断しました。そして、自分でも驚いたことに、見事合格しました。

本当に自分のやりたいことを仕事にするために、故郷のブルターニュ地方、大学など全てを捨て、自分の居場所をようやく見つけました。週末が始まる金曜日の夜は、仕事場に行ける月曜日が待ち遠しくて仕方ありません。私は皮革・縫製技術に今も魅せられ続けていますが、その中でも世代から世代へ受け継がれる伝統的な手法を大切にしている我々の仕事は特に魅力的です。それぞれの職人には癖があり、それが手作りの魅力ですが、我が社のお客様は、縫製の一針のミスも見抜ける程のエキスパートですから、そのような作品としてのミスを許すということではありません。

 

« 革工芸に大切なのは技術力ですが、愛情も大切です »

一つ一つの作品を最初の工程から手掛けられることは、ジャン・ルソー社の強みです。曾祖父のお財布を持って来られたある男性のことを、私は今でも昨日のことのように覚えています。お財布の革はかなり擦り切れていましたが、このお財布への愛着の強さに心を動かされ、彼の望みに少しでも近付けられるよう、革の素材、色調、お財布の裁断等を研究することにしました。彼が夢に描いた作品を知るため時間をかけて話し合いましたから、完成品はおおよそ予測できたことと思いますが、出来上がった作品をお渡しした時の魔法がかったようなキラキラと輝いた彼の目は、私の一番感動的な思い出となっています。このことは革工芸にとって技術力はとても重要ですが、愛情の大切さも教えてくれました。

アトリエでも人生のように、出来る限り最善を尽くさなければいけないと思います。大事なことは、心から夢中になれる好きなことを見つけることです。私にとって、それが革なのです。17年前にミツロウの香りのする革工房へ行くために大学を辞めましたが、一度も後悔したことはありません。17年間、自分の好きなことのために生き、今でも新しい作品を作るたびに、また新たな革への情熱は生まれています。

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